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2009年5月31日 (日)

ゴーギャン展@名古屋ボストン美術館

なんとか開館10周年を迎えた名古屋ボストン美術館です。「なんとか」とわざわざ付けなくてはならないところが情けない。10年で閉館という話も出たくらいですから、今回の展覧会も開催されなかったかもしれないのです。

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同館がまさに万感の思いで開催する開館10周年記念展がゴーギャン展。ゴーギャンの最高傑作《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》を初めて日本に持ってくるということで、1年前からレプリカを1階インターコモンに登場させるなどかなり気合が入っていました(現在はありません)。

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しかし、ボストン美術館から来ているのは木彫や版画も合わせて19点で、残りは国内の美術館から集めた作品。総出品数は44点とやっぱり微妙です。しかも版画連作の『ノアノア』が内21点を占めますから、油彩の出品数は本当に知れています。《我々はどこから来たのか~》の一点企画と考えたほうがいいかもしれません。

それでも、限られた作品でなんとかゴーギャンの生涯と芸術を辿ろうと頑張っています。第1章「ブルターニュ以前のゴーギャン」。一介の日曜画家だったゴーギャンは1883年、仕事を辞めて画業に専念します。ボストンからは《オスニー村の入口》と《森の中》の2点。後者はピサロっぽい1枚。

第2章「ブルターニュでのゴーギャン」。1886年、画家はブルターニュ地方のポン=タヴェンを制作の拠点とします。ボストンからは色彩がX字型に交差する構図が印象的な《二人のブルターニュ女のいる風景》と木彫のレリーフ《恋せよ、さらば幸福ならん》。国内の作品では損保ジャパン東郷青児美術館から《アリスカンの並木道、アルル》が。1888年、アルルでゴッホと共同生活を営んでいたときの作品です。

第3章「最初のタヒチへの旅」。原始の楽園を求めタヒチへ渡ったのは1891年。大原美術館の《かぐわしき大地》は国内のゴーギャンでは最も有名な作品ではないでしょうか。ボストンからは画家唯一のエッチング《ステファヌ・マラルメの肖像》。ひろしま美術館からはブロンズ《真珠のついた偶像》。オリジナルはオルセー美術館で木製とのこと。

第4章「フランスへの帰国 『ノアノア』版画連作」。1893年、ゴーギャンはパリに戻ります。相変わらず絵は売れません。タヒチでの日々を著そうと手がけた版画挿絵が『ノアノア』。10点のシリーズですが刷りの違いがあり、ボストンと岐阜県美術館から合わせて21点を並べます。ちなみに『ノアノア』が出版されたのは1901年。すでに二度と戻らぬ決意でパリを離れていたゴーギャンが本書を見ることはありませんでした。

いよいよ第5章「我々はどこから来たのか~」。1895年、再びタヒチへ渡ったゴーギャンは1897年、終生の大作に着手します。翌年完成した作品に画家は「今後これ以上のものも、これに匹敵するものも決して作りだすことはできない」との言葉を残しています。創造者である画家がこれ以上のものは作れないというのは余程のこと。その言葉どおり、この後ゴーギャンは自殺を図ってしまうのです。まさに命を懸けた大作です。

展示室では前列と台になった後列が用意されます。こういった展示の場合、流れに沿って立ち止まることのできない前列と、じっくり観られる後列という区分けがパターンですが、今回はそこまでの混雑ではないため前列でもゆっくり観ることができます。後列のメリットは横4m近い作品の全体を見渡せること。右から左へ人の一生を表しているともいわれる大作をまじまじと眺めます。後列で観ている時間のほうがずっと長くなりました。

第6章「タヒチからマルキーズ諸島へ」。1901年、マルキーズ諸島ヒヴァ・オア島へ移住したゴーギャンは1903年に死を迎えます。ボストンからは死去した年の作品《女性と白馬》。画面の上方、丘の上には白い十字架が。解説にもあるように鮮やかな色使いは最晩年まで巧みでした。静岡県立美術館の石膏像《オヴィリ》もオリジナルはオルセー美術館で陶製。ブロンズがヒヴァ・オア島の画家の墓に設置されているそうです。「オヴィリ」とは野生、野蛮の意。

ボストン美術館と国内の美術館の作品のみという条件でよくまとめ上げていたと思います。開館時間に合わせて訪れたところ、1階インターコモンにまで連なるものすごい行列になっていてびっくり。出直そうかと思ったくらいでしたが、おとなしく列に並んでいると程なく中に入ることができました。狭いロビーになっている3階にエスカレータでアクセスする構造のため、入館を調整しているのです。展示室はもちろん人は多いですが、鑑賞に支障をきたすほどではありません。午後になり帰る頃には行列は見る影もありませんでした。

5階オープンギャラリーはノリタケデザイン100年の歴史。西区則武に本社を構える高級陶磁器メーカー、ノリタケの100年余りの歩みを約200点の華麗な洋食器で辿ります。横浜、宇都宮、長崎、静岡、京都と全国を巡回して地元、名古屋でファイナル。なぜこの展覧会を名古屋ボストン美術館が持ってきたのかはよく分かりませんが、内容は充実でした。

さて、ゴーギャン展はこの後、東京国立近代美術館へ巡回します。ただし、単純な巡回展ではなく、海外の美術館の作品が加わってまた別のゴーギャン展となるようです。図録も別途編集される模様。なぜ名古屋でも同様にやれないのか、釈然としないものがあります。こんなことでは名古屋ボストン美術館の存在意義がなくなってしまうのではないでしょうか。ボストン美術館から大作を借り出し、東京ではさらに作品を加えて大規模展…。もし、今後も同様の形態で企画展を巡回させるのであれば、もう名古屋ボストン美術館なんていりません。閉館してもらったほうがましです。

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ゴーギャン展
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
名古屋ボストン美術館
2009年4月18日―6月21日

ノリタケデザイン100年の歴史
オールドノリタケからディナーウェアまで
2009年4月18日―8月30日

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2009年5月30日 (土)

ヤノベケンジ ウルトラ@豊田市美術館

豊田市美術館です。今日はパッとしないどんより天気だと思っていたら、午後になって晴れてきました。

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豊田市美術館とヤノベケンジといえば、2005年の伝説的個展キンダガルテン。展示室1に登場した巨大ロボット《ジャイアント・トらやん》の衝撃は忘れられません。今は東京都現代美術館に出現しているようですね。

今回はこれまた衝撃の最新作《ウルトラ―黒い太陽》を引っさげての個展ということでいやがおうにも期待が高まります。展示室8を使用。なんと企画展では珍しく写真撮影OKです。

まずは2006年の内なるこども(写真あり)でも観た《サヴァイバル・システム・トレイン》がお出迎え。愛嬌のある表情が印象的ですが、サヴァイバル(生き残り)のための列車というシリアスなテーマも持っています。続いて作家の代名詞ともいえるアトムスーツがずらりと並びます。

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《ミニ・アトムスーツ》他

《ファンタスマゴリア》は2007年に発表されたインスタレーション。赤いカーペットが敷かれており靴を脱いで上がります。ゆっくり明滅するシャンデリアと《森の映画館》などの作品、そして無数の《ミニ・トらやん》によって構成される空間です。ファンタスマゴリアとは幻燈機のこと。壁に投影される影が幻想的です。作品保護のため同時に体験できる人数を10人程度に制限しており、時間によって少し並ぶことになります。

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《ファンタスマゴリア》

いよいよ《ウルトラ―黒い太陽》。テスラコイル(共振変圧器)を用いて人工的に稲妻を発生させるということですが、一体どんな作品なんでしょうか。外観は巨大なウニのような物体。周囲は池になっており水が満たされています。大電力を使用し、強い電磁波と大音響を発生させるこの作品が起動するのは1日4回(平日は3回)。直前にはペースメーカー装着者がいないか、また、携帯電話は壊れる恐れがあるため電源を切るようにとのアナウンスが流れ、集まった鑑賞者をざわつかせます。展示室の照明も落とされいよいよ起動。地鳴りのような効果音が大きくなってきたかと思うと、ものすごい轟音ともに稲妻が作品の中央から上部に向かって放たれます。こ、これはすごい。展示室は騒然です。稲妻は連続して放たれますが、時間にしたら1分ほどでしょうか。徐々に地鳴りが収まりパフォーマンスは終了。これはちょっと放心状態になります。とんでもないものを創りましたね。

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《ウルトラ―黒い太陽》

中央に太陽が輝く観覧車は《Ferris Wheel》。一見、かわいらしく見えますが、チェルノブイリの廃墟と化した遊園地に着想を得ているこちらもシリアスな作品。他に《トらやん》や《アトムスーツ》のオリジナルも展示されています。

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《Ferris Wheel》

桁違いのスケールの《ウルトラ―黒い太陽》が中心だったこともあり、全体としては出品数が特に多いわけでもなく、大個展というわけではありません。しかし、あの稲妻はやはり衝撃的。この作品が他所で公開されることはあるのでしょうか。是非、全国のファンを驚かせてほしいものです。

常設展はしんりょく!と銘打たれ、2008年度の新収蔵品を中心とした展示を行います。昨年一昨年は新収蔵品だけを展示室9に集めましたが、今年は趣向を変えてきました。展示室1は黄金比を利用した諏訪直樹の作品がちょっと目を引きましたが、他はパッとせず。昨年、テーマ展を行ったミシャ・クバルは階段を利用して〈メガサイン〉を効果的に展示。展示室2では2点のみですがソフィ・カル《盲目の人々》が登場しています。他に川内倫子。

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諏訪直樹〈THE ALPHA AND THE OMEGA〉

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ソフィ・カル《盲目の人々》

展示室3ではピーノ・パスカーリと村瀬恭子。展示室4の手塚愛子《縦糸を引き抜く 新しい糧として》は岡崎市美術博物館の「森」としての絵画で目にした作品。ここに所蔵されるとは。森村泰昌は2点を新たに所蔵。どちらも女装です。展示室5はこちらも昨年のテーマ展作家フジイフランソワが2点。速水御舟の充実もすごい。立石大河亜《約束の時間》はコマ割りのマンガのような面白い作品です。

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手塚愛子《縦糸を引き抜く 新しい糧として》

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森村泰昌《セルフポートレイト(女優)/バルドーとしての私・2》(左)と《肖像(ゴッホ)》

お気に入りの美術館のコレクションが充実していくのは自分のことのように嬉しいですね。この不況の影響がないはずはないと思うのですが、それを感じさせないところがさすがです。

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ヤノベケンジ ウルトラ
豊田市美術館
2009年4月11日―6月21日

しんりょく! 平成20年度新収蔵品を中心に
2009年4月11日―6月21日

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2009年5月23日 (土)

日本の美術館名品展@東京都美術館

日本の美術館名品展の特別夜間開館は午後5時半から。ネオテニー・ジャパンを余裕を持って観終えたため、少し腹ごしらえをすることもできました。

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美術館連絡協議会(美連協)は日本の公立美術館のネットワーク組織。読売新聞社の呼びかけにより1982年に設立され、現在124館が加盟しています。その美連協が創立25周年を記念して開催するのがこの日本の美術館名品展。日本全国の美術館の名品を一堂に集めてしまおうという今までありそうでなかった企画です。

そして今日、夜間開館のないこの東京都美術館で行われるのが美連協も主催に名を連ねる美術検定の合格者を対象にした特別開館。5時半から8時までこのまたとない展覧会をなんと無料で楽しむことができます。

5時で一旦閉館し静まりつつあるトビカンに合格認定証を提示して入館します。本人確認くらいはやったほうがいいかもしれませんね。展示室へ入るとなんと音声ガイドも無料とのこと。いつもは見向きもしない音声ガイドですが、せっかくなので借りてみることにします。

作品は加盟館100館から西洋絵画、日本洋画、日本画220点が集まりました(日本画の大半は前後期展示)。期待に胸が膨らむと言いたいところですが、我らが名古屋圏の美術館の出品作品から推し量るにそうも言っていられないようです。愛知県美術館からはクリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》ではなくピカソ《青い肩かけの女》を、名古屋市美術館からはモディリアーニ《おさげ髪の少女》ではなくユトリロ《ノルヴァン通り》を、豊田市美術館からはクリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》ではなくシーレ《カール・グリュンヴァルトの肖像》を出品。やはりどの美術館も最大の目玉を出品するわけではないのです。各館の2番手、3番手のオンパレードと考えたほうがいいかもしれません。

また、美連協には国立美術館や私立美術館は加盟していません。やはりわが国で最も優れた作品を数多く所蔵しているのは(国立新美術館を除く)4つの国立美術館ですし、ブリジストン美術館やポーラ美術館、大原美術館など優れたコレクションを誇る私立美術館も数多くあります。私が思う名古屋圏で最高の西洋絵画はメナード美術館のアンソール《仮面の中の自画像》だったりします。「日本の美術館名品展」とはいいますが、あくまでも公立美術館、都道府県や市の美術館の名品展であることを頭に置いておく必要がありそうです。

地階、まずは西洋絵画から始まります。「ミレーの美術館」の異名をとる山梨県立美術館からはミレー《ポーリーヌ・V・オノの肖像》。やはり《種をまく人》ではないわけですが、名古屋ボストン美術館のミレー展で観た《種をまく人》よりもこちらを観れてラッキー。郡山市立美術館のバーン=ジョーンズ《フローラ》は間違いなくこの美術館の看板作品。同館のカフェは「フローラ」というのです。うーん、こんな作品が東北にあったとは。

モネやルノワール、ピサロと言ったあたりは作品は並びますがそこそこという感じ。世田谷美術館のルソー《サン=ニコラ海岸から見たサン=ルイ島》は愛知県美術館に巡回してきたルソー展でも感嘆した作品。伊丹市立美術館のアンソール《キリストの誘惑》は名古屋市美術館のアンソール版画展でお目にかかった作品です。このような名品との再会も嬉しいところ。

愛媛県美術館のボナール《アンドレ・ボナール嬢 画家の妹》は「日本かぶれのナビ」の印象的な1枚。岐阜県美術館はルドンではなくドニを出品。これはいくら何でも出し惜しみ過ぎなのでは。

ふくやま美術館のボッチョーニ、宮城県美術館のカンディンスキーも目を引きます。徳島県立近代美術館のピカソ《ドラ・マールの肖像》もなかなか。高知県立美術館のシャガール《オルジュヴァルの夜》はブルーが綺麗ならしい1枚。北九州市立美術館のヴラマンク《雪》は疾走感のある良作です。

姫路市立美術館といえばデルヴォー。《海は近い》は2007年のシュルレアリスム展で観ています。現代の作品では富山県立近代美術館のポロック。やりますね。現代美術館の先駆け、いわき市立美術館はクライン《人体測定 ANT66》。躍動感もさることながら衝撃の強い1枚です。

彫刻では群馬県立館林美術館のポンポン《シロクマ》がいい。誰からも愛される作品ではないでしょうか。滋賀県立近代美術館のブランクーシ《空間の鳥》が存在感を放ちます。愛知県美術館からはレームブルックとバルラッハ、豊田市美術館からはジャコメッティを出品。

ちょっと時間が押してきました。1階は日本洋画となります。海外の作品と違い、日本の作品は地元というものがありますから、郷土の美術館は腕の見せ所です。鹿児島県市立美術館の黒田清輝、千葉県立美術館の浅井忠、岩手県立美術館の萬鐵五郎、岡山県立美術館の国吉康雄などは自慢の郷土画家といえるでしょう。

新潟県立万代島美術館の藤田嗣治《私の夢》は2006年の藤田嗣治展でもお目にかかっている傑作。同展のメインイメージ格の作品です。日本洋画では他に栃木県立美術館の小杉放菴《金太郎遊行》、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の《顔31》などが印象に残りました。おっと、岐阜県美術館の山本芳翠《裸婦》も忘れてはいけませんね。岐阜の誇る名品です。

2階は日本画。いきなり飯田市美術博物館の菱田春草がいい。展示替えで明日までの展示です。京都市美術館の前田青邨《観画》は2006年の前田青邨展以来の再会。名作です。山梨県立美術館の近藤浩一路《雨季》はしっとりとした佳作。山本丘人《流水のうた》も美しい作品。東京都現代美術館の所蔵というのはちょっと意外な感じがします。

作品のキャプションは出品元の各美術館からのメッセージ。最も貸し出し依頼の多い作品であるだとか、この後の作風の変化は是非当館で観て欲しいだとか、単なる解説にとどまらないところが面白い。学芸員の作品への愛着が伝わってきて微笑ましいものがあります。

このような特別開館は、正直言ってフタを開けてみるまで不安な面もありました。混雑度はまったく想像がつきませんし、鑑賞のみでグッズ売場は休みだったりするありがちな片手落ちはないだろうかとか、タダより高いものはありませんからね。

結果はけっこうな人出ではありましたが十分に余裕がある鑑賞ができ、とても満足度の高いものでした。グッズ売場は各美術館のグッズが勢ぞろいしており垂涎の品揃え。時間がなくてじっくり見られなかったのが残念でした。こういうアートショップが常設でどこかにあればいいなぁなんて思ったりも。

もちろん展覧会そのものの内容も充実で、いろいろ書きはしましたが、この画期的な企画が実現したことを思えばもう何も言うことはありません。よくできました(笑)。今回は近代の作品を中心とした構成でしたので、また他の切り口も考えられるのではないでしょうか。密かに期待です。

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日本の美術館名品展
東京都美術館
2009年4月25日―7月5日

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ネオテニー・ジャパン@上野の森美術館

上野に戻ってきて上野の森美術館です。2006年のダリ回顧展以来とちょっと久しぶり。

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精神科医、高橋龍太郎は日本の現代アートの優れたコレクターとして知られる人物。そのコレクションは1000点を超え、1990年代以降の日本の最新現代アートのまさに教科書ともいえる内容にまで達しています。今回の東京遠征で回る展覧会を探していておぉっ!と声を上げてしまったのがこの高橋コレクションを紹介するネオテニー・ジャパンです。

ネオテニーとは幼形成熟の意。日本の現代アートどころか現代社会そのものにも通じるようなこのキーワードを軸に、日本の現代作家33人の約90点を展示します。鹿児島、札幌を巡回しての東京見参、この後は新潟、秋田、米子と巡回します。いずれ名古屋圏でも観られる日が来るのかもしれませんが、今週から始まった東京展、この巡り合わせを逃す手はありません。

展示室に入ると、いきなり鏡張りの六足の狼が眩い輝きを放ちます。鴻池朋子《惑星はしばらく雪に覆われる》。さらに、無数のナイフが飛び交う大画面の《Knifer Life》、フロアの円形スクリーンに映し出される映像作品《mimio-Odyssey》とハナから夢中にさせてくれる作品が続きます。すごいつかみ。

ガラスビーズを用いた名和晃平の〈PixCell〉シリーズに続いては奈良美智。《Candy Blue Night》を始め4点が揃います。小沢剛は〈ベジタブル・ウェポン〉のシリーズが好き。会田誠は《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》と《大山椒魚》の2点。後者は是非観てみたかった作品。たまりません。

天明屋尚《ネオ千手観音》も有名どころ。岡本一太郎・三太郎(小沢剛)の二曲一双《無題(尾形光琳)》の後ろには須田悦弘《雑草》が。相変わらず見逃しそうなところにありますね。対面して展示される池田学と町田久美はともにディープな世界を展開します。

小川信治の〈WITHOUT YOU〉シリーズではフェルメール《ヴァージナルの前に座る女》から人物が消されます。レオナルド《最後の晩餐》からはイエス、ユダ、弟子たちがそれぞれ消される始末。だらだらと言葉が並べられつまらないったらない秋山さやかを過ぎて2階へ。

階段を上がると加藤美佳が万人の目を釘付けにします。《パンジーズ》は豊田市美術館(写真あり)に寄託されている幻想的な少女の肖像。小林孝亘も相変わらずいいですねぇ。さらひらきは2点。家庭の日常品何もかもに足が生えて歩き出す《elsewhere》などらしさ全開です。

伊藤存《よだれのきらめき》は刺繍による印象的な作品。青山悟はこれが刺繍か?と思わせるような精緻な作品たちです。照屋勇賢は豊田市美術館のガーデンズでも驚愕しました。村山留里子は独自の服飾世界。華やかです。小谷元彦の《Human Lesson(Dress 01)》は狼の毛皮を使ったコート。メインイメージにも使われている作品です。束芋、加藤泉は独特の世界を展開。濃すぎる…。

階段を下りるとグッズ売場になりますがまだまだ展示は続きます。高嶺格《MUTED SPACE》は15枚の鏡を使った不思議空間。ガンダム展の巨大セイラさんのインパクトが強い西尾康之は《素粒の鎧》。原型なしでいきなり鋳型を創るという陰刻鋳造の作品群です。窓に囲まれ張り出したスペースに展示されており、外から観ることもできます。

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西尾康之《素粒の鎧》

これが全て個人コレクションというのは本当に信じられない思いです。しかし、やはり現代アート、玉石混淆の感がないでもありません。取るに足らない作品もありましたし、将来に亘って評価に値するものがどれだけあるかも分かりません。技法や支持体によっては物理的に後世に残りえない作品もあるでしょう。

とは言いながら存分に楽しんだことは間違いありません。私の現代アートの価値基準は「すごい」、「楽しい」、「美しい」。これらの要素があればとりあえずそれでOK。現代アートファン必見です。

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ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション
上野の森美術館
2009年5月20日―7月15日

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ヴィデオを待ちながら@東京国立近代美術館

土曜日の2日目は比較的空いている(であろう)美術館を回ります。1館目は竹橋の東京国立近代美術館。昨日は上野に宿泊、そしてこの後は上野の森美術館と東京都美術館ということで再び上野に戻らなくてはなりません。行程の都合上、仕方ないのですがちょっと足が痛くなってきました。

東京国立近代美術館は実は初めてです。これまで縁がなかったのが本当に不思議なくらいですが、とにかくもやっと訪れることができました。時間の制約はありますが優れた所蔵作品もとても楽しみです。

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ビデオ・アートの展覧会というと昨年の液晶絵画を思い出しますが、今回は1960~70年代のビデオ・アート黎明期の作品を紹介していきます。とはいっても過去の作品だけでなく近年の作品も織り交ぜられており、古い映像ばかりの展覧会ではありません。30人のアーティストの51点の映像作品が揃います。巡回展はありません。

B2サイズという大判の非常に凝った作品リストを片手に観ていきます。入口にあるのはリスト上は第2セクションに属するジョン・バルデッサリ《I Am Making Art》。映し出されているのはタイトルとは裏腹にだらだらしながらこのセリフを呟くだけのアーティストの姿です。

1「鏡と反映」。まだビデオが珍しかった時代、アーティストも手探りで創作に向かいます。ウォーホル《アウター・アンド・インナー・スペース》は最初のビデオ・アートともいわれる1965年の作品。他の作品はブラウン管やプロジェクターですが、この作品だけは16ミリフィルム映写機による上映で開始時間も決まっています。3点続くヴィト・アコンチの作品、《こじ開け》は女性が塞いでいる目を無理やりこじ開けようとする作家を映した作品。抵抗する女性との激しいやりとりは愛の行為のようにも写り、観るものをドキッとさせます。

2「物体の非物質化」。コンセプチュアル・アート的な作品を集めます。マーサ・ロスラー《キッチンの記号論》はアルファベット順にキッチン用具を次々に持ち出す作家を映しますが、道具をまるで武器のように扱う動きが印象的。アルファベットの最後の方は手抜きでしたけど(笑)。バルデッサリ《もう二度と退屈な芸術は作りません》はこの言葉を延々紙に書き記すという非常に退屈な様子(笑)を映した作品。泉太郎の新作《裏の手 手の裏》はこのセクションに属しますが、展示室の各所で展開される作品です。面白かったのはモニターの前に水が入った瓶を置いた作品。よく出来ていますねぇ。

3「身体/物体/媒体」。乱暴に言ってしまえば身体を使った作品というところでしょうか。ブルース・ナウマンの作品が多く取り上げられます。《ヴィデオの回廊》は細い通路に入っていって楽しみます。壁に大きく映し出されるのは野村仁《カメラを手に持ち腕を回す:人物、風景》。ちょっと酔いそう(笑)。

4「フレームの拡張」。スローモーションなど時間的な編集を巧く使った作品を紹介。リチャード・セラ《鉄道旋回橋》はオレゴン州ポートランドにある可動橋を映します。トラス構造の機能美を見事に表現。液晶絵画で観たビル・ヴィオラ《プールの反映》にも再会。今回は《映り込む池》と訳されています。ダラ・バーンバウム《テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン》はスーパーヒロイン物のテレビドラマを編集して面白おかしくしてしまった作品。音楽に合わせて前進後退を繰り返すクルマを映したフランシス・アリス《リハーサル1》も大変ユニーク。ペーター・フィシュリ+ダヴィット・ヴァイス《事の次第》はルーブ・ゴールドバーグ・マシン、いわゆるピタゴラ装置をモチーフにした作品ですが、そのスケールに驚かされます。30分にわたり途切れることなく動きがつながる装置たち。しかしそこには秘密が…。

5「サイト」は場所を表し、アースワークなど場を使った作品がテーマ。アースワークの代名詞ともいえるロバート・スミッソンの《スパイラル・ジェッティ》の記録映像を観ることができます。家を真っ二つに切断してしまうゴードン・マッタ=クラーク《切り裂き》は愛知県美術館の愉しき家でも観ている豪快な作品。最後はこれまた第2セクションに属するジル・ミラー《I Am Making Art Too》で終わります。この構成にはにやりとさせられますね。

全体としては充実の内容でとても興味深い展覧会でした。よくこれだけ集めてきたものです。作品1点ごとの解説が分かりやすかったのもグッド。鑑賞をよく手助けしてくれたと思います。会場もガラガラに空いていて満足。今日は企画展示室の前のロビーで出品作家の泉太郎と小林耕平のアーティスト・トークが行われていたのですが、こちらは時間の関係で最後にちょっと寄っただけという感じになりました。

時間がありませんが、4階に上がり常設展を観ていきます。岸田劉生、萬鐵五郎、関根正二、土田麦僊、古賀春江、藤田嗣治、靉光、北脇昇、東山魁夷などなどなどなどまだ誰かたくさん忘れているような気もしますが、教科書で見るような有名な作品の連続で感嘆あるのみ。やっぱりすごいですね。ゆっくり観られないのが本当にもったいない。いつか必ずじっくりと。

4階特集コーナーは北脇昇。2階のテラスの前、ジュリアン・オピーにも会えて嬉しい。2階ギャラリー4はテーマ展木に潜むもの。木を用いたインスタレーション作品を集めます。

今回の東京遠征2日間の行程の中で同館は「ついで」的な感じでそれほどの動機付けはなかったのですが、企画展も常設展も楽しめて大正解の訪問となりました。さぁ、上野に戻りましょう。お昼を食べている時間はなさそうです(泣)。

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ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ
東京国立近代美術館
2009年3月31日―6月7日

木に潜むもの
2009年3月14日―6月7日

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2009年5月22日 (金)

ルーブル美術館展@国立西洋美術館

今回の東京遠征のメインイベントは国立西洋美術館のルーブル美術館展。これをまともに観るためには金曜日の夜間開館を狙うしかありません。上野には午後5時半に到着。写真は退館した8時過ぎですが。

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17世紀ヨーロッパ絵画の傑作を集めたルーブル美術館展です。ルーブル美術館展と銘打たれた展覧会はこれまで幾度となく開催されていますが、今回の企画はかなり頑張っています。目玉はフェルメールとラ・トゥールですが、他にも優れた作品が目白押し。出品される71点のうち約60点が日本初公開、約30点が初めてルーブルを出る作品とのこと。東京展のあとは京都市美術館に巡回します。

チケットを買うのにわずかですが並びました。今回の国立西洋美術館は混雑仕様。向かって右側の特設の通路から館内に入り、企画展示室のある地下に下りていきます。入場制限はしていませんでしたが、この時間でもまだまだ人は多く大混雑といって差し支えない状態です。

17世紀ヨーロッパ絵画は大きくはバロックとして括られますが、国によって特徴が大きく異なります。フランスは古典主義、オランダは市民社会の発展による風景画、静物画、風俗画の隆盛、フランドルやスペインでは宮廷画家ルーベンスやベラスケスが活躍しました。同展のような展覧会の場合、国ごとにセクション分けをして展示するのが常道と思われますが、なんと今回は国ごとには分けず3つのテーマを設定して作品を分類してきました。公式サイトなどでは「縦展示」に対して「横展示」などという表現もしているようです。企画する側としてはたまには違った切り口でということなのでしょうが、観る側にとって果たしてこれが適切どうかは微妙なところです。分かりにくい、普通に観たかったと感じる人もいることでしょう。

まずは第I章「『黄金の世紀』とその陰の領域」。「黄金の世紀」、特に17世紀のオランダを語るときよく使われる言葉です。しかし、華やかなだけの時代ではなかったというのがテーマ。最初の作品はプッサン《川から救われるモーセ》。いきなりの大作です。プッサンはこの主題を少なくとも3回描いているそうです。国立新美術館のルーブル美術館展に出ていたタピスリーはプッサンの別の下絵に寄るものでしたね。続いてプルビュス〔子〕《マリー・ド・メディシスの肖像》。アンリ4世に嫁いだメディチ家のマリアの肖像です。ルーブル美術館でマリー・ド・メディシスといえばルーベンスなわけですが、今回はそうではありません。しかしこの作品も絢爛豪華、そしてかなり大型です。かなり後ろに下がらないと全体が見渡せません。この混雑でこれは大変。

フォントネイ《金色の花瓶に活けられた花束とルイ14世の胸像》、ミニョン《ジョウビタキの巣》と超絶描写の作品が続きます。そしてレンブラント《縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像》とハルス《リュートを持つ道化師》が並びます。どちらもこれぞという1枚。うーん、これはすごい。このセクションの最後、ステーン《家族の陽気な食事》もこの画家らしい喧騒の宴が描かれます。

フェルメール《レースを編む女》はこの最初のセクションの中間あたりににわりと何気にあります。しかし取り囲む人の数は半端ではありません。わずか23.9×20.5cmのこの小さな作品にものすごい人が集中しています。絵の前に辿り着くのは容易ではありませんでしたが、なんとか到達。最前列真正面でまじまじとレースメーカーを眺めます。それにしても小さい。見どころはいろいろある作品だとは思いますが、特に印象的だったのは画面左下の流れるような赤と白の糸でしょうか。とにかく「輝き」のある1枚でした。

第II章「旅行と『科学革命』」では画家たちの移動、そして科学技術の発展に注目します。ポスト《ブラジル、パライーバ川沿いの住居》はブラジルの風景を描いた珍しい作品。長くポルトガル領だったブラジルですが、17世紀のこの時期オランダ西インド会社がブラジルに侵入しており、ポストはその遠征隊に参加していたとのこと。ロラン《クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス》は海港風景を描いたいかにもな傑作です。

ベラスケスと工房の《王女マルガリータの肖像》はスペイン王フェリペ4世の娘であの《ラス・メニーナス》にも登場する王女の肖像。かわいいですね。このセクションに展示されているのはもちろん、この作品が王女の姿を伝えるために外国へ送られたものだから。ウテワール《アンドロメダを救うペルセウス》はギリシャ神話の名場面ですが、オランダの画家にとってはスペインとの戦争を表したものでもあるようです。

階段を降りて第III章「『聖人の世紀』、古代の継承者?」は信仰がテーマ。特にカトリック協会によって列聖された聖人が多くの絵画に描かれました。カルロ・ドルチは受胎告知の《天使》と《聖母》が並びます。国立西洋美術館の《悲しみの聖母》もいいですが、この2点組も素晴らしい。特に天使の穏やかな表情は和みます。

そしてついにラ・トゥール《大工ヨセフ》です。2005年のラ・トゥール展ではこの作品の模写が来ていましたが、まさかオリジナルが日本に来るとは。《レースを編む女》は初来日、《大工ヨセフ》は2度目の来日ですが、それでもこちらのほうがよく来てれくたという思いがあります。幼子イエスの手を透かす炎の光がすごすぎです。やっぱり模写と全然違うなぁ。

ムリーリョ《6人の人物の前に現れる無原罪の聖母》も見事な1枚。荘厳な雰囲気溢れる珍しい横長の「無原罪の御宿り」です。最後の展示室で目を引いたのはデ・デイステル《ヨハネス・デ・フォスの哲学論文を呈示する天使と寓意像》。周囲に描かれた天使たちが掲げているのは哲学の論文。画中画ならぬ画中論文となっており、非常に細かいですが1文字1文字しっかり視認することができます。これは驚愕の1枚ですね。

閉館の8時まであと10分。再び《レースを編む女》に戻ります。まだ10人ほどがこの小品を食い入るように見つめています。その中に混ざって待つことしばし。最前列真正面に再び立って目を凝らしてこの作品ともお別れです。《大工ヨセフ》ももう1回観て時間いっぱい。

フェルメールとラ・トゥールはもちろんですが、その他にもこれでもかというほど多くの傑作に出会え、とにかく見応えのある展覧会でした。月並みですが、さすがルーブルと言うしかありません。

2007年9月から新館部分が閉室だった常設展ですが、5月11日から6月3日までの間は本館部分も含めて全室閉室となっています。どのみち、常設展を観る時間はまったくありませんでしたが。常設展の再開は6月4日から。無料観覧券付のポストカードを頂きました(使う機会は無さそうですが)。

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ルーブル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画
国立西洋美術館
2009年2月28日―6月14日

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ルーブル美術館展@国立新美術館

国立新美術館にやってきました。地下鉄乃木坂駅からアクセスするのは今回が初めて。やっぱりこちらから来るほうが全然楽ですね。それでも一旦正面に回ってその印象的な建築を眺めてしまうのですが(笑)。

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この春、東京では2つのルーブル美術館展が開催されています。国立新美術館で開催されているルーブル展は朝日新聞とテレビ朝日の主催。「子ども」をテーマに作品を集めてきました。一方、読売新聞と日本テレビが主催する国立西洋美術館のルーブル展は17世紀ヨーロッパ絵画の傑作を多く集めてきており、比べてしまうと地味な感じは否めないところです。

ルーブル美術館の所蔵品は古代オリエント美術、古代エジプト美術、古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術、イスラム美術、彫刻、工芸品、絵画、素描・版画の8部門で構成されていますが、同展ではイスラム美術を除く7部門から幅広く出品されます。出品数は約200点とこの会場ならではのボリューム。東京展の後は大阪、国立国際美術館に巡回します。

I「誕生と幼い日々」。まずは誕生の前後、妊婦までテーマに入れて展示が始まります。ここは古代エジプトやギリシャのテラコッタの小像などが続きやっぱり地味。絵画作品もパッとしません。II「子どもの日常生活」も《書字板》や《ゲーム盤》など資料的な展示ですが、絵画ではシャルダン《食前の祈り》が目を引きます。18世紀のフランス絵画ですが、17世紀のオランダの風俗画がルーツとなっている落ち着いた1枚です。III「死をめぐって」の《少女のミイラと棺》は今回の目玉の一つ。これはやっぱり緊張感があります。

IV「子どもの肖像と家族の生活」。徐々に目を引く絵画や彫刻が現れ始めます。ボリューム的にもメインのセクションでしょうか。ボル《山羊の引く車に乗る貴族の子どもたち》は大作ではありますがなんともコミカルな1枚。レノルズ《マスター・ヘア》もかわいい。ルーベンスの素描《少女の顔》は利発そうな少女の横顔です。胸像がいくつか並ぶ中、クアノン《アレクサンドリーヌ=エミリー・ブロンニャールの胸像》は顔つきが妙に現代っ子ぽい感じで思わず顔がほころびます。そして出ましたベラスケスと工房の《フランス王妃マリー=テレーズの幼き日の肖像》。ルイ14世に嫁いだスペイン王女マリア=テレサのお見合い写真(肖像画)です。

V「古代の宗教と神話の中の子ども」。《幼いホルス神に授乳するイシス女神》が素晴らしい。これぞイシスという感じの末期王朝のブロンズです。同じく彫刻、こちらは19世紀の大理石ですがフォワヤティエ《アモール》も見事。この世に天使がいたらまさにこの姿なのではと思わせる逸品です。VI「キリスト教美術のなかの子ども」。いよいよ聖母子の登場となります。ティツィアーノ《聖母子と聖ステパノ、聖ヒエロニムス、聖マウリティウス》は今回のメインイメージ。斬新な構図の聖会話のシーンです。最後はVII「空想の子ども」。天使やアモール、プットーがテーマ。デュショワゼル《アモール》はルーブル宮ドノン翼の階段の装飾とのこと。

ところどころで目を引く作品はありましたが、全体的にはよくもこれだけガラクタを集めてきたなという感じです。ルーブルなら何でもいいというワケではありません。数を絞ってでも作品の質を上げたほうが良かったのではないでしょうか。タピスリーははっきり言って不要だし、素描、版画の類もあれだけ要るのかどうか。会場が大きすぎるのも良し悪しですね。あとは小品であっても作品までの距離が遠いのが気にかかりました。

今回の東京遠征の中では最も会期末が近い展覧会でしたが、人の入りはそこそこ。さほどストレスなく観て回ることができました。

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ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち
国立新美術館
2009年3月25日―6月1日

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国立トレチャコフ美術館展@Bunkamura ザ・ミュージアム

今回の東京遠征はルーブル美術館展のフェルメールとラ・トゥールが最大のお目当て。日本の美術館名品展も楽しみです。大混雑のルーブル美術館展は金曜日の夜間開館を狙うしかないでしょう。日本の美術館名品展は明日、土曜日の夜、美術検定合格者を対象に特別夜間開館を行います。というわけで、この2館の夜間開館を軸にみっちり美術館を回ります。

初日1館目、まずは渋谷へ。昨年10月の東京遠征の時には工事中だった渋谷マークシティの連絡通路に岡本太郎《明日の神話》が堂々お目見えしています。東京都渋谷区、大阪府吹田市、広島市が誘致をめざしたこの作品は結局東京に腰を据えることになり、昨年11月17日から公開されています。万博開催地である吹田、被爆地である広島に比べ必然性が乏しいと思われる東京ですが、結局のところは出来レースというヤツで関係者は最初からこの壁画を他所にもっていく気はなかったのでしょう。日本テレビ、東京都現代美術館、そしてこの渋谷マークシティと作品帰国後の修復を除けばこの作品が東京を離れることはありませんでした。まぁ、これだけ大量の人の目に触れる場所に設置されたのはそれはそれで意義のあることなのかもしれませんが。

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さて、Bunkamuraの国立トレチャコフ美術館展です。国立トレチャコフ美術館は紡績業で財を成したパーヴェル・トレチャコフの個人コレクションをその礎とする美術館。自宅ギャラリーでの一般公開から始まったコレクションは1918年に国立美術館になるまでに到りました。昨年のシャガール展でもその優れたコレクションの一端に触れています。

今回の企画は、主に19世紀後半のロシアのリアリズムから印象主義までを展観するロシア絵画100%の硬派(?)な展覧会です。出品数は75点。ロシア方面にめっぽう強い企画会社により東京展の後は、岩手、広島、郡山を巡回します。

聞き慣れないロシアの画家の作品が並ぶ展示室は、逆に作品をじっくり観ることができるような気がします。I「叙情的リアリズムから社会的リアリズムへ」。ボゴリューボフ《ネヴァ河でのそり遊び》は大画面の作品。隅々まで描き込まれた画面に目を凝らします。

II「日常の風景」。シーシキン《森の散歩》、マクシモフ《嫁入り道具の仕立て》などの描写には目を見張ります。コルズーヒン《修道院の宿舎にて》は皮肉の効いた風俗画。こちらも大画面の隅々に注目しなければなりません。

III「リアリズムにおけるロマン主義」。ドゥボフスコイ《冬》は美しい雪景。光の当たり方がモネら印象派を想起させます。クインジ《エルブルース山―月夜》は本当に月光が当たっているかのよう。レヴィタン《静かな修道院》も水面、そして夕日の表現がいい。ロシアの画家が描いたインドの風景はヴェレシャーキン。何とも不思議な感じがしますが、正確な描写が目を引きます。

IV「肖像画」。同展の最大の目玉、クラムスコイ《忘れえぬ女》の登場です。冷ややかな表情でこちらを見下ろす謎の貴婦人。フライヤーなどの印刷物よりきつい感じがします。英題は"A Unknown Lady"というそうで本来は《見知らぬ女》であるはずですが、日本ではいつしか《忘れえぬ女》と呼ばれるようになったそうです。なんとピッタリなタイトルでしょうか。また人物だけでなくコートや帽子の描写も刮目。淡く描かれたサンクトペテルブルクの背景も作品を引き立てるなくてはならない要素です。このセクションでは同じくクラムスコイの《画家シーシキンの肖像》もいい。鋭い視線の《自画像》も見事です。トルストイ、ツルゲーネフ、チェーホフと文豪3人をそれぞれ描いた肖像画も大型で見応えあり。

V「外光派から印象主義へ」。ポレーノフ《アブレムツェヴォの池》やシーシキン《ペテルホフのモルドヴィノワ伯爵夫人の森で》など印象的な風景画が続きますが、レーピン《秋の花束》やスィチコフ《田舎の美人》はいかにもロシアの女性の肖像画という感じですね。後半は印象主義的な感じの作品が並びます。いくつかの雪景の作品が印象的でした。

1館目からなかなかいい展覧会でした。平日の午前中ですがけっこうな人が入っています。もう会期も2週間を残すのみですからね。今回の東京遠征は会期末近くになってしまった展覧会が続きます。この後の行程も覚悟してかからなければなりません。

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国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア
Bunkamura ザ・ミュージアム
2009年4月4日―6月7日

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2009年5月18日 (月)

月刊あんかけスパゲッティ 
フルット

西区は円頓寺商店街にあるあんかけスパゲッティ専門店。アーケードに覆われた昔ながらの商店街にたたずむ新しいお店です。

最安価のイタリアンから始まり、ベジタブルやベーコンソテーが揃うラインアップからナポリレッチェの系統であることが分かります。もちろんスパにはサラダ付き。ランチタイム、11時45分までに来店すると50円引になる早割サービスがユニークです。

ナポリ、レッチェと同様ミラカンはないわけですが、ミラネーズにキャベツ炒めをミックスしたミラキャベなんていうメニューがあります。ちょっと変わったメニューですが、この具材の多さには満足。

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ミラキャベ 850円

こちらはフライエッグ。ウインナー、ベーコンに野菜の目玉焼きというあまり他のお店にはないトッピングですが、あんかけスパによく合う具材が勢揃いという感じの嬉しい一品です。

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フライエッグ 750円

ボリュームシステムは1.2倍が100円増、1.5倍が150円増。0.7倍は50円引となっています。標準でも満足のボリュームではないかと。

レッチェによく似た濁り系ブラウンのソースは深みのある複雑な味わい。辛さはほどよくしっかりで、全体としてかなりのレベルと言えるでしょう。将来有望、おすすめの良店です。

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フルット(flutto)
西区那古野一丁目13-13

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2009年5月10日 (日)

だまし絵@名古屋市美術館

名古屋市美術館の南東側で寝そべっているのはアントニー・ゴームリー《接近V》。タイトルは大地との限りない接近という意味らしい。今日は真夏日になってしまい、暑くてぐったりしているようにも見えます(笑)。

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古今東西のだまし絵、トロンプ・ルイユ、トリックアートを紹介する展覧会。先日のエッシャー展といい大江戸の賑わい展といい妙に企画が被ります。名古屋市美術館の後はBunkamura ザ・ミュージアム、兵庫県立美術館を巡回。総出品数は142点となっていますが、会場ごとに不出品があり、また同じ会場でも展示替えがあるため、実質の出品数は約100点といったところ。

アルチンボルド、ヘイスブレヒツ、ホーホストラーテン、歌川国芳、河鍋暁斎、ダリ、マグリット、エッシャーと錚々たる顔ぶれの展覧会ではありますが、正直なところ、美術館が遊園地と化してしまうこの手の企画は苦手です。大混雑と大喧騒を覚悟し、あきらめ気分で足を運びました。

前売券を準備し午前9時半の開館とともに突入。空いている後半から先に観て回ることもできるとスタッフがしきりに呼びかけていますが、そんなことをしたら後から前半に戻ってきたときに悲惨なことになっているのは火を見るより明らかです。どんどん人が入ってきますが、最初から順番に観ていくしかないでしょう。

作品リストは途中に置いてあります。展示の順番は図録やリストとはやや異なり、まずは「トロンプルイユの伝統」。ヘイスブレヒツやホーホストラーテンら17~18世紀のヨーロッパの伝統的なトロンプ・ルイユから始まります。木の壁に貼り付けられた絵画や壁に状差しに差し込まれた手紙などがリアルに描かれます。

「イメージ詐術(トリック)の古典」がリスト上の第1章。アルチンボルドの登場です。《ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)》は画家の作品の中でも特に有名な1枚でしょう。もちろん日本初公開。よくこの作品が来てくれたものです。何しろ16世紀の板絵ですからね。気になるのはやっぱりライティング。低い視点からでは照明が当たって観にくいのではないでしょうか。

アルチンボルドの流派にアトリビュートされている《水の寓意》はベルギー王立美術館から。オリジナルはウィーン美術史美術館です。ロイの三重肖像画はV字型の溝が連続する板に描かれた作品。右と左、観る方向によって像が変わります。この時代にこんな作品があったとは驚き。人気を集めていたのはシェーンの《判じ絵》。なるべく側面から観る必要があるため、絵の両サイドは大混雑です。

「日本のだまし絵」。歌川国芳は《人かたまつて人になる》。展示替えの関係でちょうど刈谷市美術館で観ていない作品に巡り会いました。《みかけはこはゐがとんだいゝ人だ》などは昨日観たばかりなのでこれはラッキー。国芳と歌川広重、2人の影絵も面白い。

浮世絵ばかりではありません。描表装の作品も素晴らしいものばかり。鈴木其一《紙雛図》は風帯や一文字まで手描きの1幅。狩野章信《内裏雛図》は本物の雛飾りが掛幅の中に飾られているようです。これはすごい。幽霊画をこれだけ観られるのも貴重な機会です。長沢芦雪《幽霊図》はこの2週間だけの展示。足下は表装も含めて全てが淡くぼかされています。呉春と松村景文の合作《柳下幽霊図》はプライス・コレクションの1幅。幽霊には付き物の柳が表装にびっしりと描かれます。

「アメリカン・トロンプルイユ」ではエヴァンズ《インコへのオマージュ》。画家の経歴をインコの経歴として記述しているのが面白い。ハバリー《石盤―覚え書き》は要するに家庭にあるメモボード。吊り下げられたペンがリアルすぎます。

2階に上がり「20世紀の巨匠 マグリット・ダリ・エッシャー」。ダリ《アン・ウッドワード夫人の肖像》は諸橋近代美術館から。いかにもダリといった感じの1枚です。マグリットが6点もあるのは嬉しい。《望遠鏡》はマグリット・スカイの美しい作品。ワシントン・ナショナル・ギャラリーからは《白紙委任状》がまた来ていますね。エッシャーは全て先週の松坂屋美術館と同じだったのでさっと観ていきます。

最後は「多様なイリュージョニズム 現代美術におけるイメージの策謀」。福田美蘭は相変わらず面白い。《壁面5°の拡がり》では絵画が壁面に5°の角度でめり込んでいきます。今年1月に亡くなった福田繁雄は《sample》。正面(?)から観ると「sample」の文字、側面から観ると天使になるホワイト・ブロンズです。アンジェリコの《受胎告知》だと分かる人は今日はあまりいないかな。高松次郎の「影」はいつ観てもいいですね。

今回の展覧会での圧倒的一番人気はパトリック・ヒューズ《水の都》でしょう。絵の中の街並みがぐりぐりと動くあの感覚は思わず声を上げずにはいられません。タネが判っても「なーんだ」とはならず感心してしまう作品ではないでしょうか。杉本博司は〈ポートレイト〉シリーズから《ウィリアム・シェイクスピア》。本城直季は〈small planet〉シリーズから2点。展示替えの関係で代表作ともいえる流水プールの写真が観られなかったのはちょっと残念。

とにかくものすごい人でした。午後になっても入場制限まではしていませんでしたが、当日券売場は行列です。展示室は予想どおりの状態。午前中でしたので混雑はまだ何とか我慢できましたが、あの騒々しさにはほとほと参りました。こういう企画ですから静寂というのは無理だとは思いますが、いや疲れました。

気になったのは現代美術のセクションの結界。遠すぎてキャプションが非常に読みにくい。配置もいい加減な感じですし、会期が始まってから配置したものでしょうか。これは要改善だと思います。一方、これだけ家族連れなど普段美術館に来ないような層が大勢訪れている企画にも関わらず、専門用語丸出しでまったく媚びるところがないお堅い解説は逆に面白いと思いました(笑)。

図録で不出品の作品をチェックすると豊田市美術館のマグリット《無謀な企て》(東京のみ)やミケランジェロ・ピストレット《窃視者(M.ピストレットとV.ピサーニ)》(兵庫のみ)が載っています。これはこの地方の美術館の作品だからということでしょう。また長崎県美術館のダリ《海の皮膚を引き上げるヘラクレスが~》(兵庫のみ)は2007年のダリ展で同館に来たばかり。これも仕方ないところです。是非観てみたかったのは、遠山記念館の鈴木其一《業平東下り図》(東京のみ)。先日の岡崎市美術博物館で観た鈴木守一の同名の作品のオリジナルとなる見事な描表装の1幅です。

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視覚の魔術 だまし絵
名古屋市美術館
2009年4月11日―6月7日

コレクションのなかの「だまし絵」?!
2009年4月11日―6月14日

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2009年5月 9日 (土)

大江戸の賑わい展@刈谷市美術館

連休明けの週末は好天。美しい新緑の中の刈谷市美術館です。

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中右瑛のコレクションによる浮世絵展。四大浮世絵師展と同様、全国津々浦々をとめどなく巡回し続けている企画会社の展覧会です。刈谷にやってきたので、まぁ観ておくかという感じで訪問。

喜多川歌麿、東洲斎写楽以降、文化文政時代から幕末までのバラエティに富んだ浮世絵を紹介。肉筆画22点を含む約150点というボリュームです。浮世絵の展覧会は予想以上の賑わいに驚かされることが多いですが、今回はかなり余裕の入り。

時代的に美人画、役者絵は歌川国貞や歌川国芳らが中心。肉筆画は図録では最後ですが展示室の関係で序盤にきます。葛飾北斎の扇面《富士遠望》には「画狂人」のサイン。菊川英山《姫だるま》が目を引きます。無款の《芝居絵》は128×234cmの大きさで看板だったと思われる作品。迫力です。

風景画もこの時代の大きな特徴ですが、さすがに北斎〈冨嶽三十六景〉や歌川広重〈東海道五拾三次之内〉は見慣れてきています。武者絵・芝居絵のセクションは三枚続の作品が続きます。有名な国芳《相馬の古内裏 滝夜叉姫と大骸骨》を始めとして大蜘蛛、蟒蛇(おろち)、酒呑童子、大百足などの魑魅魍魎が次々に登場し非常に楽しい。風刺画は解説がないと芝居絵と区別が付きませんね。知ればなるほどという感じでこちらも面白い。

戯画のセクションではこれも有名な国芳《みかけはこはゐがとんだいゝ人だ》がお目見え。歌川芳藤《子猫寄り集まって親猫になる》や《ふの字づくし福助》も興味津々です。展示室をまたいで北斎の文字絵遊びや広重の影絵遊びも楽しめます。

他にも開国絵や横浜絵、有名人の死を公告した追善絵などまさにバラエティな内容です。全体的に気になるのは作品の状態でしょうか。特に発色がねぇ…。最近ではV&Aボストン美術館など海外美術館の作品の状態の良さに驚かされることが多いので、比べてしまうとどうしても、という感じです。

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中右コレクション 幕末浮世絵アラカルト
大江戸の賑わい展 北斎・広重・国貞・国芳らの世界
刈谷市美術館
2009年4月25日―5月31日

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2009年5月 3日 (日)

アヴァンギャルド・チャイナ@愛知県美術館

中国の現代アートを展観する珍しい展覧会。1980年代をその始まりとするアヴァンギャルド・チャイナの20年を16作家・グループの52点で振り返ります。国立新美術館、国立国際美術館を巡回して愛知県美術館がファイナル。

いきなりミュージアム・ショップがあるロビーが仕切られ電動車椅子に乗った老人たちが! これに一瞬ドキッとしない人はいないのではないでしょうか。孫原+彭禹(スン・ユァン+ポン・ユゥ)のその名も《老人ホーム》。13台の車椅子に乗った老人たちは人形ですが驚くほどリアル。その老人たちの車椅子が前後気ままに動いているのですから、これはかなりやばい作品です。

大掛かりな作品が多い現代アート。特に今回はビデオ・アートの作品が多いこともあり会場設営にはかなり苦心の跡が窺えます。結果、通常は企画展の出口になっているラウンジが入口になり、常設展示室である展示室4まで企画展に割いた上で、展示室3から1へ普段とは逆回りになるという思い切った配置を取ってきました。

ただ、展示作品にはこれといった印象のものはありません。特に前半は退屈な作品が続きます。黄永砅(ホアン・ヨンピン)は今回の作家の中では一番年長。中国現代アートのパイオニア的存在と思われますが、作品はピンと来ません。張培力(ジャン・ペイリー)のビデオも同様。

中国の現代アートは文化大革命が終了した1970年代末に始まります。1980年代、ダダからポップアートからありとあらゆる現代アートの様式が一気に流入、八五美術運動と呼ばれる一大ムーブメントが起こります。しかし1989年、民主化を求めたデモ隊を人民解放軍が武力弾圧(六四天安門事件)。民主化への熱気も現代アートへの情熱も下火になっていくのです。

ポリティカル・ポップやシニカル・リアリズムなどという様式があるようですが、結局のところ、唐突な現代アートへの取っ掛かり、不安定で複雑な国情、加えて言えば知的財産権などお構いなしのお国柄、現代アートを健全に反芻し、昇華できているとは思えない印象があります。それこそが中国現代アートだと言われればそれまでですが。

馬六明(マ・リウミン)や張洹(ジャン・ホアン)のパフォーマンスもまぁインパクトはありますが、アートか?と言われると首を縦には振りがたいものがあります。楊振中(ヤン・ジェンジョン)の《アイ・ウィル・ダイ》もどこかで見たようなコンセプト。

面白いと思ったのは曹斐(ツァオ・フェイ)の《ラピッド・ドッグ》。何もかもチープなビデオ作品ですがインパクトは強烈。愛知県美術館がフライヤーの図版に選んだのも頷けます。最後の楊福東(ヤン・フードン)《断橋無雪》は半円形に設けられた8面の大型スクリーンにモノクロームの美しい映像が流れ、なかなかいい感じでした。

作品はこんな感じでも展示自体はよく出来ていたと思います。普段と違う逆回りなのも新鮮。いつも同じ回り方だとそれだけで展覧会の全体が掴めてしまい無意識にペースを調整してしまう向きがありますが、今回は最後の楊福東などいつもの展示室1とはとても思えませんでした。たまにはこういうのもいいんじゃないでしょうか。

ちなみに、愛知県美術館は昨年9月にブログを開設しています。学芸員の方が美術館運営の裏側などを紹介。今回の企画展でも広報や会場設営の工夫や苦労などが興味深く綴られています。チェックして出かければ美術鑑賞がさらに楽しくなること請け合いです。

常設展は展示室5からとなりますが、今回は常設展示室どころか愛知芸術文化センター全体を使ってのイベント、アニマルズ in AAC(AACは愛知芸術文化センターの略称)が繰り広げられています。三沢厚彦の動物彫刻は全国5会場を巡回した2007年の「アニマルズ+」あたりから一気に知られるようになってきましたね。

展示は美術館の展示室6とその前室がメインですが、センターの地下2階や2階のフォーラムなどにも動物たちが登場します。全部で15点。ただの動物の木彫りではあるのですが、どの動物も目つきが面白く独特の愛嬌があります。スタンプラリーも行われており、10個のスタンプを集めるとプレゼントも。上に書いた美術館ブログには何が貰えるか「来てのお楽しみ」となっていますが…小さなエコバッグが貰えます(笑)。プリントの動物はスタンプと同じく10種類、選ぶことができます。

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エコバッグ

しかし、展示室はともかくオープンなスペースに展示されている動物は写真を撮らせてくれてもよさそうなものですが、全て撮影禁止。このあたりはイベントの趣旨も考えるとちょっと狭量です。一方、テーマ展でいつも用意してくれているパンフレットは今回もいい出来。これはいつも嬉しく頂戴しています。

アニマルズ in AACは2010年に愛知県が開催を予定しているあいちトリエンナーレ2010のプレイベントという位置づけ。昨今の芸術祭ブームに乗せられ愛知県もトリエンナーレを企画しています。現代美術をメインに2010年8月21日から10月31日の日程で開催されるとのこと。日本全国あちこちで開催されているビエンナーレやトリエンナーレですが、愛知は独自性のある芸術祭を継続的に開催していけるでしょうか。注目です。

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アヴァンギャルド・チャイナ 〈中国当代美術〉二十年
愛知県美術館
2009年4月3日―5月24日

アニマルズ in AAC 三沢厚彦の世界
2009年3月24日―5月24日

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2009年5月 2日 (土)

エッシャー展@松坂屋美術館

松坂屋美術館のエッシャー展です。同館では2004年にもエッシャー展が開催されています。そのときと同様、ハウステンボスからの出品ということでほとんど同じ内容かなとも思いましたが、やっぱりエッシャーは大好きな画家ですので足を運んでしまいます。

今回はエッシャーの作品は約80点。2004年展のフライヤーには約180点とありますから出品数はかなり減っているようです。その代わりにエッシャーの恩師ド・メスキータを始めとする関連作家の作品約30点が加わります。松坂屋美術館としては珍しく作品リストがあり、これは大助かり。

まずはI「エッシャーと小動物」。初期の作品ですが、いきなり《バッタ》や《コガネムシ》といった超絶技法の木口木版に目を奪われます。黒一色の木版にしてこの質感、そしてこの細密描写。口が開いたままになっていまします。そして『スコラ哲学者の恐怖の冒険』の挿絵が5点。今回は『24の寓意画』はお休みのようですね。2004年展ではこちらの印象がかなり強かった記憶があります。

続いてII「イタリア時代」。エッシャーの芸術を語る上で外すことが出来ない要素がこのイタリア時代でしょう。彼の地で目にした奇勝が確かな技倆で捉えられます。《サン・ピエトロ寺院の内部》では上から見下ろす特異な構図が、《静物と街路》では室内と屋外の境界が曖昧な風景が描かれ、徐々にらしさが現れてきます。

III「エッシャーの迷宮(異次元への挑戦)」。水面を扱った《水たまり》や《三つの世界》は大好きな作品。《上と下》、《凹凸》、《もう一つの世界》といよいよエッシャーの世界が全開となり、代表作《ベルベデーレ(物見の塔)》、《上昇と下降》、《滝》でクライマックスを迎えます。《版画画廊》は以前はあまり印象がない作品でしたが、テレビ東京『美の巨人たち』で取り上げられてからは、かなり気になる作品にランクアップしました。

特別展示Iとして「周辺作家たち」を特集。エッシャーの妻、イエッタ・ウミカーの珍しい作品も。ド・メスキータはハールレムの建築装飾美術学校での恩師。エッシャーが建築よりグラフィック・アートに向いていることを見い出し、木版技術を指導したとのこと。その他、中等教育クラスからの親友バス・キストらの作品が並びます。

特別展示IIは「エッシャーと家族」。エッシャーの父親は水工技師で明治時代に日本で活躍したお雇い外国人でもありました。G.A.エッセルといったほうが通りがいいかもしれません。下から見上げるようにして描かれた若き日の《自画像》もこちら。

最後はIV「メタモルフォーゼと平面の正則分割」。エッシャーが生涯に渡って取り組んだテーマです。《昼と夜》はその最初期の傑作。黒と白の鳥が交わる中央から左右と下に遷移していく画面はすでに手の加える余地などまったくない完成度。この他、多くの平面の正則分割の作例が並びます。《蛇》の部分の習作はエッシャー最後の木版。晩年は妻に去られるなどあまり幸福とはいえなかったようです。

入口と展示室途中で流されていた映像は2006年に東京で開催されたスーパーエッシャー展で使われたものですかね。いやしかし、何度観てもエッシャーは面白い。2004年展は相当な混雑でしたが、今日あたりは連休でみな遠出をしているのか、かなり余裕がありました。

今回はいつもグッズ売場になっているコーナーを常設展にして、グッズ売場は美術館の外のフロアに出していました。この方がスペースの使い方としてはいいかもですね。

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迷宮への招待 エッシャー展
松坂屋美術館
2009年4月29日―5月19日

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